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テック企業が直面する多様性のジレンマ / The Diversity Dilemma in Tech Companies:「アメリカ人事界隈」#アメリカHR #HRLinqs #HRLinqsLearning

執筆者の写真: 榊原 将/HR Linqs, Inc.榊原 将/HR Linqs, Inc.

アメリカのトランプ政権によるDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)対策への圧力が強まる中、テック業界を含む多数の企業がDEIプログラムの方針を変更または停止しつつあります(The Diversity Dilemma in Tech Companies)。


AmazonやMetaなどは年次報告書(10-K)などの公的文書からDEIの言及を削除し、トランプ政権の監査リスクを回避しようとする一方、AppleやMicrosoftは引き続き多様性を重視する姿勢を示しています。


「企業別の動向」

  1. Amazon:ウェブサイトのDEIコミットメントは残しつつも、古いプログラムや資料を削除。年次報告(10-K)からDEI言及を一部削除しつつ、「ポジション」ページで継続的な取り組みをアピール。

  2. Apple:従来からの「カルチャー・インクルージョン」方針を堅持。株主総会では保守的提案を否決し、多様性維持を明言。

  3. Google:採用面でのDEI目標を再評価し、年次報告(10-K)からDEIに関する具体的言及を削除。文化的行事の縮小なども検討。

  4. IBM:株主からの保守的提案を受けたが、DEI関連の給与インセンティブを依然として維持。ウェブサイトの包摂ページは継続。

  5. Intel:年次報告(10-K)の文章を一部変更し、具体的なDEI目標や数値を減らした。ただしウェブサイトでは、多様性とインクルージョンを重要な企業価値として発信。

  6. Meta:DEIターゲットの廃止や社内DEIチームの解体を発表。多様性を理由とする決定の誤解を避けるため、あえて「レースや性別を考慮しない」採用方針を示唆。

  7. Microsoft:最新のレポートでDEIの重要性を再強調。一方で、事業整理の一環でDEIチームを縮小した経緯がある。

  8. Nvidia:ウェブ上で「ダイバーシティ&インクルージョン」ページを維持し、2024年のレポートでも「People, Diversity and Inclusion」を継続的に掲げる姿勢。

  9. OpenAI:かつての「Commitment to Diversity」文言を「Building Dynamic Teams」に差し替え、DEIの直接的な言及を削減。

  10. Oracle:公式サイトの「Culture and Inclusion」ページは維持しているが、対外的アピールを控える可能性もあり詳細は不透明。

  11. Salesforce:年次報告(10-K)からDEI目標の文言を削除しつつ、2024年の「equality update」では引き続き「多様性の継続」を明言。

  12. Tesla:Elon Musk氏がDEIを公然と批判する立場であり、企業としてのDEI報告書は2020年以降発表なし。公式文書でもDEIの言及をほぼ排除。

  13. Workday:2023年の年次報告(10-K)でDEIについての目標を削除しながらも、公式ページには依然として「ダイバーシティを核とする企業文化」のメッセージを掲載。

  14. Zoom:昨年のリストラでDEIチームを削減し、今後は外部コンサルタントと協働する方針に転換。2022年以降、独自のDEIレポートは公表していない。


「企業の検討点」

  1. 法的リスク評価と施策調整:DEI縮小が必要な場合でも、社内文化を守るための“サイレントDEI”や代替施策を検討し、法務部門と緊密に連携。

  2. DEIコミットメントの再定義:公的文書では言及を控えつつも、内向きに施策を継続することで、従業員の不安を和らげつつブランドを維持。

  3. 企業価値とリスクマネジメントの両立:DEI後退はマイノリティ社員のモチベーション低下や評判リスクを伴う。社外の政治的圧力と社内のエンゲージメントを天秤にかけてバランスをとる。

  4. グローバル展開企業の一貫性:米国内の政治的状況と、国際社会で求められるDEI基準とのギャップを埋めるため、地域ごとの施策差別化を検討。

  5. 経営トップのメッセージ発信:経営陣がDEIに対してどの程度コミットメントを示すかによって、従業員やステークホルダーの信頼度が大きく変わる。


「Q&A」

Q1: DEIを縮小すると、採用や離職率に影響はありますか?

A1: 多様性を重視する候補者が応募を避ける可能性や、マイノリティ社員が離職するリスクが高まるため、採用力とリテンション力が低下する恐れがあります。


Q2: 企業が10-KからDEI言及を削除するのはなぜでしょうか?

A2: 政府や保守的な株主からの監査リスクを回避するため、公的文書におけるDEI表現を控えるケースが増えています。


Q3: DEI方針をあえて公表せず内部で続けるメリットは?

A3: 外部からの政治的圧力を最小限に抑えつつ、社内の多様性やインクルージョンの取り組みを維持でき、従業員モラルを守る効果が期待できます。


Q4: 政治的な背景を除けば、DEIは本当にビジネス価値を生みますか?

A4: 多様な視点を取り入れることで、イノベーションや問題解決力が向上し、組織の競争優位性に寄与する研究結果が多数報告されています。


Q5: DEIをやめる方向に進む場合、何に気をつければいいですか?

A5: 社員や社会からのネガティブな評価を招きやすいため、コミュニケーションを丁寧に行い、別の形で公正な職場環境を整備する努力が必要です。


Q6: AppleやMicrosoftがDEIを続けられる要因は何でしょうか?

A6: 企業トップが明確に多様性をビジネス価値と考えており、株主や従業員とのコミュニケーションも活発。法的リスクよりブランド維持やイノベーションを優先していると推察されます。


Q7: 今後、DEIが完全に撤廃される可能性はありますか?

A7: 政治的状況によっては公的に縮小される企業が増える可能性がありますが、多様性がイノベーションやグローバル競争力に結びつく点で、完全撤廃はリスクが高く、社会的批判も強まるでしょう。



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