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執筆者の写真榊原 将/HR Linqs, Inc.

夢遊病とAmericans with Disability Act(ADA: 障がいを持つアメリカ人法)

米国では様々な裁判が日々行われている。

企業も(原因は従業員側であった場合でも)会社都合で解雇する際には、細心の注意が必要であり、様々な観点から解雇理由の正当性を検証する必要がある。


最近、解雇関連の裁判に関して興味深い判決が発表された。


夢遊病が関連しており、解雇がADAに抵触するか焦点となった裁判である。


今回の件は、2018年10月にNextGen Healthcare社の全国セールス会議に出席して、セントルイスのホテルに宿泊していた2名の営業担当に関するものである。


原告側のHarkeyさん(女性)が同会議に出席をしていたO’Donnellさんの部屋のドアを夜中にノックした。O’Donnellさん(男性)はバーから戻ったばかりで、ノックをしたのは一緒にバーで飲んでいた同僚の男性従業員だと思い部屋のドアを開けると、黒バスローブのみを身にまとったHarkeyさんが部屋に入ってきた。


O’Donnellさんが部屋が違うことを理由に退室を伝えても無視し続け、ローブを脱いでベッドに入り寝始めた。


O’Donnellさんは既婚者であり、出張中の自分の部屋のベッドに別の女性がいることに困惑をして、即人事部長に連絡をして部屋まで来てもらった。


Harkeyさんが目を覚ますまで待ち、その後彼女は自室に戻された。


Harkeyさんは人事部長に以前から夢遊病の兆候があったことを通知したものの、人事部長から休職と医師の診断を受けるよう告げられ、その数日後に解雇をされた。


Harkeyさんはその後、医師から夢遊病(Somnambulism)と診断されたことを理由に、NextGen Healthcare社を訴訟をした。


訴訟から4年弱が経過したが、今回の焦点はHarkeyさんが夢遊病という障がいを理由に不当に解雇をされたか、つまりADAやテキサス州の障がい者法に抵触していないかどうかという点である。


裁判結果として、NextGen Healthcare社が行った措置は不当解雇(差別)に値しないということであった。


夢遊病自体はADAにおいて障がいとみなされるが、このケースは夢遊病時に行った「行動」に基づく解雇のため不当解雇とはみなされない、との判断である。


今回の行動はHarkeyさんが意図して行ったことでは無く、行ったことすら覚えていない状況であるが、それは障がいとは別に捉える必要があるという判例になる。


今回は障がいが絡んでいるので一概に言えることではないが、「知らなかった」や「そのような意図は無かった」という理由が通じないということは理解しうる。


またNextGen Healthcare社の人事部長もHarkeyさんに医師の診断を推奨したこと自体は、人事の観点からはリスクの高い行動である。起因が障がいと思った場合でも、医療問題とは切り離して検討をするべきであり、また医師の診断書を提出されて以降の会社判断は一層、問題につながる可能性が高い。

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